Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)の音楽を初めて聴くと、「どうやってこの曲を作ったんだ?」と思う。
リズムが突然ずれる。
拍子が変わる。
コードが予想外の場所へ動く。
ベースは異常なラインを弾き、ドラムは細かく分裂し、キーボードから奇妙な音が飛び出す。
その上を、Nai Palmの太く、少しざらついた声が自由に動き回る。
ジャズ。
ソウル。
ファンク。
R&B。
ヒップホップ。
ブラジル音楽。
電子音楽。
プログレッシブ・ロック。
さまざまな要素が入っている。
しかし、どのジャンルにも完全には属さない。
彼らの音楽はしばしば「Future Soul=未来のソウル」と呼ばれてきた。
だが本人たちは、ジャンルを発明しようとしていたわけではない。
面白いリズム。
美しいコード。
奇妙な音。
気持ちいいグルーヴ。
それらを4人で追いかけていたら、結果として誰も聴いたことのない音楽になった。
Hiatus Kaiyoteとは、そんなバンドだ。
- メルボルンから始まった4人
- Nai PalmとPaul Bender
- 「正解」がない音楽
- 『Tawk Tomahawk』
- 「Nakamarra」
- 『Choose Your Weapon』
- 「Breathing Underwater」
- 「Shaolin Monk Motherfunk」
- 変拍子を「難しく聞かせない」
- Paul Benderのベース
- Perrin Mossのリズム
- Simon Mavinという音の設計者
- Nai Palmの声
- ヒップホップ界がHiatus Kaiyoteを発見する
- なぜラッパーたちは彼らをサンプリングするのか
- しかし、バンドは止まる
- 死を意識する
- 『Mood Valiant』
- Arthur Verocaiとの出会い
- 「Red Room」
- 複雑さから余白へ
- 『Love Heart Cheat Code』
- 「Everything’s Beautiful」
- 「Make Friends」
- Jefferson Airplaneをカバー
- 「Future Soul」とは何だったのか
- 技術のための技術ではない
- 「完璧」ではなく「エネルギー」
- Kendrick Lamarたちが見つけたもの
- 初めて聴くなら
- 「未来のソウル」を鳴らす4人
メルボルンから始まった4人
Hiatus Kaiyoteはオーストラリア・メルボルンで結成された。
メンバーは、
Nai Palm(ヴォーカル/ギター)
Paul Bender(ベース)
Simon Mavin(キーボード)
Perrin Moss(ドラム/パーカッション)
の4人。
中心にいるのはNai Palm。
本名はNaomi Saalfield。
しかしHiatus Kaiyoteの面白さは、Nai Palm一人の才能だけでは説明できない。
4人それぞれが強烈な音楽家であり、その個性がぶつかった瞬間にHiatus Kaiyoteの音が生まれる。
Nai PalmとPaul Bender
物語の始まりは、Paul BenderがNai Palmの演奏を見たことだった。
小さなクラブでギターを弾きながら歌っていたNai Palm。
その演奏にBenderは衝撃を受ける。
そこから二人は一緒に音楽を作り始めた。
後にSimon MavinとPerrin Mossが加わり、Hiatus Kaiyoteが形になっていく。
重要なのは、誰か一人が曲を書いて残りのメンバーが演奏するようなバンドではないことだ。
誰かがリズムを持ってくる。
誰かがコードを加える。
誰かが奇妙な音を鳴らす。
そこから別の誰かがアイデアを広げる。
音楽が4人の間を行ったり来たりしながら変形していく。
「正解」がない音楽
Nai Palmは彼らの制作について、決まった公式はないという趣旨の話をしている。
これはHiatus Kaiyoteの音楽を理解するうえで非常に重要だ。
ポップソングにはある程度の形式がある。
イントロ。
Aメロ。
Bメロ。
サビ。
しかしHiatus Kaiyoteの曲は、その予測を簡単に裏切る。
サビが来ると思ったら違う場所へ行く。
突然リズムが変わる。
美しいメロディが現れたと思ったら数秒で消える。
普通なら一曲分になりそうなアイデアを、数十秒で使ってしまうことさえある。
彼らにとって重要なのは、形式を守ることではない。
その瞬間に一番面白い方向へ曲を動かすことだ。
『Tawk Tomahawk』
2012年。
Hiatus Kaiyoteはデビューアルバム『Tawk Tomahawk』を発表する。
まだ世界的にはほとんど知られていないオーストラリアのバンドだった。
しかし、この作品が思わぬ人物の耳へ届く。
Questlove。
The Rootsのドラマーであり、ヒップホップとソウルの歴史そのものと言ってもいい人物だ。
彼がHiatus Kaiyoteを評価したことで、バンドの名前はアメリカのネオソウル/ヒップホップ界へ急速に広がっていく。
そして、もう一人の重要人物が現れる。
Q-Tipだ。
「Nakamarra」
Hiatus Kaiyoteの初期を代表する曲が「Nakamarra」。
複雑なバンドというイメージとは少し違い、非常に温かくシンプルなラブソングだ。
柔らかなギター。
ゆったりしたリズム。
Nai Palmの声。
そして後にQ-Tipを迎えたバージョンが制作された。
この「Nakamarra feat. Q-Tip」はグラミー賞のBest R&B Performance部門にノミネートされる。
オーストラリアの小さなインディーバンドが、突然グラミー候補になった。
しかし、ここから彼らが分かりやすいR&Bへ進むことはなかった。
むしろ次の作品では、さらに複雑になっていく。
『Choose Your Weapon』
2015年。
セカンドアルバム『Choose Your Weapon』を発表。
全18曲。
約70分。
ジャズ、ソウル、ファンク、電子音楽、プログレ、ヒップホップ、ブラジル音楽。
大量のアイデアが詰め込まれている。
曲同士をつなぐ短いインタールードもあり、アルバム全体が一つの世界のように設計されている。
タイトルは「武器を選べ」。
しかし、その武器とは暴力ではない。
自分が世界と向き合うために何を選ぶのか。
音楽。
創造性。
知識。
愛。
そうしたものまで含めた言葉として聞こえる。
「Breathing Underwater」
『Choose Your Weapon』を初めて聴くなら「Breathing Underwater」は非常に良い入口だ。
Hiatus Kaiyoteらしい複雑なリズム。
美しいコード。
Nai Palmの巨大なヴォーカル。
それでいて、ちゃんと歌として心に残る。
彼らの音楽は複雑だ。
しかし「複雑だからすごい」という音楽ではない。
最終的には感情へ届く。
ここが重要だ。
「Shaolin Monk Motherfunk」
一方、「Shaolin Monk Motherfunk」まで進むと、このバンドのおかしさがよく分かる。
タイトルからして、
少林寺の僧侶+マザーファンク。
意味が分からない。
そして音楽も凄まじい。
細かく変化するリズム。
突然現れるブレイク。
ファンク。
ジャズ。
電子音。
プログレッシブな展開。
数分間の中で曲が何度も姿を変える。
しかし演奏している4人は、その複雑さをまるで普通のグルーヴのように鳴らしてしまう。
変拍子を「難しく聞かせない」
Hiatus Kaiyoteは変拍子やポリリズムを多用する。
そのためミュージシャンから非常に高く評価されている。
しかし彼らのすごさは、数学的に複雑なことではない。
複雑なのに身体が動くことだ。
頭で、
「今は何拍子なんだ?」
と数えなくてもいい。
Perrin MossのドラムとPaul Benderのベースが強烈なグルーヴを作るため、変な拍子でも身体は自然に反応する。
難しいことを難しく聞かせない。
これは非常に高度な技術だ。
Paul Benderのベース
Hiatus Kaiyoteの音楽で、実は非常に重要なのがPaul Benderのベースだ。
普通のソウルやR&Bなら、ベースは曲の土台を作ることが多い。
Benderはもっと自由だ。
メロディを弾く。
リズムをずらす。
突然高い音へ行く。
ドラムと一体になったかと思えば、次の瞬間には別の方向へ動く。
それでも曲が崩れない。
Hiatus Kaiyoteの奇妙な浮遊感は、このベースによってかなり支えられている。
Perrin Mossのリズム
そしてPerrin Moss。
彼のドラムは、Hiatus Kaiyoteの音楽を普通のネオソウルから完全に別の場所へ連れていく。
ヒップホップ的なビート。
ジャズ的な即興。
電子音楽的な細かなリズム。
アフリカやラテン音楽につながるポリリズム。
それらが同時に存在する。
しかもMossは、ただ複雑なドラムを叩くだけではない。
必要なら非常にシンプルなビートを叩く。
「Red Room」のような曲では、その引き算が強烈な効果を生む。
Simon Mavinという音の設計者
Simon Mavinのキーボードも独特だ。
ピアノ。
シンセサイザー。
電子音。
奇妙なコード。
時には楽器なのか効果音なのか分からない音まで入れる。
Hiatus Kaiyoteの音楽には、
森。
宇宙。
ゲーム。
夢。
水中。
そんな風景を想像させる瞬間がある。
Mavinの音色選びは、その世界観を作る重要な要素になっている。
Nai Palmの声
そしてNai Palm。
一度聴けば忘れにくい声だ。
低く、太い。
しかし突然高い音まで飛ぶ。
ソウルフルだが、伝統的なR&Bシンガーとも違う。
リズムへのアプローチも独特で、歌がドラムやベースと同じように細かく動く。
そして彼女はギタリストでもある。
複雑なコードを弾きながら、さらに複雑なメロディを歌う。
ライブを見ると、
「これを同時にやっているのか」
と驚く。
ヒップホップ界がHiatus Kaiyoteを発見する
『Choose Your Weapon』以降、面白い現象が起こる。
ヒップホップやR&Bのトップアーティストたちが、Hiatus Kaiyoteの音源を次々とサンプリングし始めた。
Anderson .Paak。
Kendrick Lamar。
Drake。
BeyoncéとJay-Z。
Teyana Taylor。
特に象徴的なのがKendrick Lamarだ。
2017年のアルバム『DAMN.』に収録された「DUCKWORTH.」では、Hiatus Kaiyoteの「Atari」がサンプリングされた。
Drakeも同年の「Free Smoke」で「Building a Ladder」を使用している。
オーストラリアの実験的なバンドの音が、世界最大級のヒップホップ作品の中へ入っていった。
なぜラッパーたちは彼らをサンプリングするのか
理由は分かりやすい。
Hiatus Kaiyoteの曲には、サンプリングしたくなる瞬間が大量にあるからだ。
奇妙なコード。
数秒だけ現れるメロディ。
変なリズム。
Nai Palmの声。
普通なら一曲を通して使うようなアイデアが、次々と現れる。
ビートメイカーから見れば宝箱だ。
だからHiatus Kaiyoteはジャズやネオソウルのファンだけではなく、ヒップホップのプロデューサーたちからも愛されるようになった。
Anderson .Paakは「Without You」で「Molasses」、Kendrick Lamarは「DUCKWORTH.」で「Atari」、Drakeは「Free Smoke」で「Building a Ladder」をサンプリング。さらにThe Carters(Beyoncé & Jay-Z)も「713」で彼らの音源を使用している。
しかし、バンドは止まる
『Choose Your Weapon』の成功。
グラミーへのノミネート。
世界ツアー。
有名アーティストからの支持。
順調に見えた。
しかし2018年、Nai Palmが乳がんと診断される。
ツアー中だった。
彼女は治療を受けることになり、バンドの活動も中断する。
当初は短期間の休止を予定していたが、治療と回復には時間が必要だった。
さらにその後、COVID-19のパンデミックが世界を止める。
結果として、次のアルバムまで6年もの時間が空くことになる。
死を意識する
がんという経験は、Nai Palmの人生観を大きく変えた。
「自分は死ぬかもしれない」。
それまで抽象的だった死が突然現実になる。
すると、
自分は何をしたいのか。
何を残したいのか。
誰と時間を過ごしたいのか。
そうしたことを考えざるを得なくなる。
後にNai Palmは、バンドで音楽を作ることが自分にとってどれほど重要なのかを改めて認識したと語っている。
Hiatus Kaiyoteは仕事ではない。
自分の人生の目的に近いものだった。
『Mood Valiant』
2021年。
6年ぶりとなるサードアルバム『Mood Valiant』が発表される。
タイトルにはNai Palmの母親の思い出が関係している。
母親が所有していた車には「Mood Valiant」という愛称が付けられていた。
その言葉がアルバムタイトルになった。
『Choose Your Weapon』がアイデアを猛烈な速度で詰め込んだ作品だとすれば、『Mood Valiant』は少し違う。
余白がある。
呼吸がある。
一つの音を長く味わう。
6年間の経験を経て、バンドは「全部鳴らす」だけではなく「何を鳴らさないか」まで考えるようになった。
Arthur Verocaiとの出会い
『Mood Valiant』を語るうえで欠かせない人物が、ブラジルの作曲家・編曲家Arthur Verocaiだ。
1972年のセルフタイトル作品で知られ、後にヒップホップのプロデューサーたちから再発見された伝説的な人物。
Hiatus KaiyoteはVerocaiの音楽を敬愛していた。
そして実際にブラジルへ渡り、彼とレコーディングする。
その成果が「Get Sun」だ。
Verocaiがストリングスとホーンのアレンジを担当。
Hiatus Kaiyote特有の複雑なグルーヴと、ブラジル音楽の巨大で美しいオーケストレーションが重なる。
これは単なる「憧れの人との共演」ではない。
バンドの音楽そのものを新しい場所へ動かした。
「Red Room」
『Mood Valiant』の中で最も広く知られた曲の一つが「Red Room」。
面白いのは、そのシンプルさだ。
Hiatus Kaiyoteといえば、
変拍子。
複雑な展開。
異常なコード。
そんなイメージがある。
しかし「Red Room」は驚くほどゆったりしている。
ビート。
ベース。
鍵盤。
Nai Palmの声。
それだけでいい。
複雑なことができるバンドが、あえてシンプルに演奏する。
だからこそ一音一音が強く聞こえる。
複雑さから余白へ
初期Hiatus Kaiyoteの魅力は「情報量」だった。
しかし『Mood Valiant』では、余白そのものが音楽になる。
これは演奏技術が落ち着いたということではない。
逆だ。
何でもできるから、何もしない瞬間を選べるようになった。
音楽において「弾かない」という判断は、時として高速で演奏することより難しい。
Hiatus Kaiyoteはそこへ進んだ。
『Love Heart Cheat Code』
2024年。
4枚目のアルバム『Love Heart Cheat Code』が発表された。
ここでHiatus Kaiyoteは再び少し変わる。
これまでの作品では、スタジオで細かく音を構築する感覚が強かった。
しかし今回は、4人が同じ部屋で演奏することから曲を作るという、よりバンドらしい方法へ戻っていった。
ジャムする。
誰かがアイデアを出す。
他のメンバーが反応する。
その瞬間に生まれたものを育てる。
完成された曲を演奏するのではなく、演奏しながら曲を発見する。
「Everything’s Beautiful」
『Love Heart Cheat Code』の「Everything’s Beautiful」は、この時期のHiatus Kaiyoteを象徴する曲だ。
タイトルは、
「すべては美しい」。
世界は完璧ではない。
人生には病気も死もある。
不安もある。
それでも、日常の中には美しい瞬間が存在する。
初期の複雑怪奇なHiatus Kaiyoteから考えると、驚くほどシンプルなメッセージだ。
しかしNai Palmが経験したことを考えると、その言葉には重さがある。
「Make Friends」
「Make Friends」も面白い。
テーマは友情。
恋愛だけが人間関係の中心ではない。
友達。
仲間。
コミュニティ。
誰かと一緒にいること。
考えてみれば、Hiatus Kaiyoteというバンド自体が友情によって成立している。
4人の強烈な個性。
普通なら衝突しそうな音楽性。
しかし、それを消さない。
全員のアイデアを残す。
だから音楽が奇妙になる。
そして面白くなる。
Jefferson Airplaneをカバー
『Love Heart Cheat Code』には意外な曲も収録されている。
Jefferson Airplaneの「White Rabbit」。
1960年代サイケデリック・ロックの名曲だ。
しかしHiatus Kaiyoteが演奏すると、単なる懐メロのカバーにはならない。
リズム。
音色。
Nai Palmの声。
すべてが彼らの世界へ変換される。
ここでも彼らの音楽観が見える。
ジャンルではなく、
「この曲を自分たちが演奏したら何が起きるか」。
それだけなのだ。
「Future Soul」とは何だったのか
Hiatus Kaiyoteには長年「Future Soul」という言葉が付いている。
確かに便利な言葉だ。
ソウルがある。
R&Bがある。
しかし未来的で奇妙。
だからFuture Soul。
ただ、彼ら自身の音楽を聴いていると、その言葉さえ少し狭く感じる。
ジャズ。
ファンク。
ヒップホップ。
ブラジル音楽。
プログレ。
電子音楽。
サイケデリック。
ゲーム音楽的な感覚。
自然界の音。
すべてが混ざっている。
「未来のソウル」というより、
Hiatus Kaiyoteというジャンル。
そう考えた方が分かりやすい。
技術のための技術ではない
Hiatus Kaiyoteはミュージシャンから非常に人気が高い。
理由は明確だ。
演奏が異常に上手い。
リズムが複雑。
ハーモニーも複雑。
アレンジも複雑。
分析しようと思えば、いくらでも分析できる。
しかし彼ら自身が目指しているのは、音楽理論の試験ではない。
Nai Palmは感情を歌う。
Perrin Mossはグルーヴを作る。
Paul Benderはベースを踊らせる。
Simon Mavinは世界を歪ませる。
理論は、そのための道具にすぎない。
「完璧」ではなく「エネルギー」
Hiatus Kaiyoteの音楽を象徴する考え方の一つに、
芸術は完璧さではなく、エネルギーだ
という感覚がある。
多少変でもいい。
少し歪んでいてもいい。
完璧に整っていなくてもいい。
その瞬間にしか生まれないエネルギーがあるなら、それを残す。
だから彼らの曲には生き物のような感覚がある。
きれいに設計された建築物ではない。
植物のように勝手に枝が伸びていく。
Kendrick Lamarたちが見つけたもの
Hiatus Kaiyoteが世界へ与えた影響を考えると面白い。
彼ら自身が巨大なポップヒットを大量に出したわけではない。
しかし、その音は別のアーティストの作品を通して世界中へ広がった。
Kendrick Lamar。
Drake。
Anderson .Paak。
Beyoncé。
Jay-Z。
彼らがHiatus Kaiyoteの音を切り取り、自分たちの音楽へ入れる。
つまりHiatus Kaiyoteは、現代音楽の巨大なサンプル・ライブラリーのような存在にもなった。
未来のミュージシャンが使いたくなる音を、先に作っていたのだ。
初めて聴くなら
Hiatus Kaiyoteを初めて聴くなら、まず「Nakamarra」。
ここから始めるとNai Palmの声とバンドの温かさが分かる。
次に、
「Breathing Underwater」。
ここで複雑なHiatus Kaiyoteへ入る。
さらに、
「Molasses」
「Shaolin Monk Motherfunk」
「By Fire」。
このあたりまで聴けば、『Choose Your Weapon』期の異常な音楽性が分かってくる。
そこから『Mood Valiant』へ。
「Red Room」
「Get Sun」
「And We Go Gentle」。
そして『Love Heart Cheat Code』の、
「Everything’s Beautiful」
「Make Friends」
「Telescope」。
この順番で聴くと、複雑さを追求していた4人が、少しずつ余白とシンプルさを手に入れていく過程が見えてくる。
「未来のソウル」を鳴らす4人
Hiatus Kaiyoteの音楽は未来的だ。
しかし、使っている材料そのものは新しくない。
ジャズ。
ソウル。
ファンク。
ブラジル音楽。
ヒップホップ。
サイケデリック・ロック。
何十年も前から存在している音楽だ。
それなのに、Hiatus Kaiyoteが演奏すると未来に聞こえる。
なぜなのか。
おそらく彼らは、ジャンルを「完成したもの」として扱っていないからだ。
ジャズはこう演奏する。
ソウルはこう歌う。
ファンクはこういうリズム。
そんなルールから始めない。
面白いコードがある。
変なリズムがある。
Nai Palmがメロディを歌う。
Benderが予想外のベースを弾く。
Mossがリズムを壊す。
Mavinが奇妙な音を足す。
そして4人で、
「これ面白いね」
となったら、そのまま進む。
その結果として生まれた音楽を、後から誰かがFuture Soulと呼んだ。
『Tawk Tomahawk』。
『Choose Your Weapon』。
『Mood Valiant』。
『Love Heart Cheat Code』。
作品を重ねるごとに、彼らは変化してきた。
複雑さから余白へ。
スタジオでの構築から、4人で演奏する喜びへ。
そしてその途中には、成功だけではなく病気や死への恐怖もあった。
それでも4人は戻ってきた。
なぜなら、彼らにとってバンドとは仕事以上のものだからだ。
音楽を作る。
友達と同じ部屋にいる。
変な音を鳴らす。
誰かが反応する。
そこから、まだ存在していなかった曲が生まれる。
未来とは、最新の機材を使うことではない。
誰も考えなかった組み合わせを、本気で面白がることなのかもしれない。
Hiatus Kaiyoteは未来の音楽を予測しているのではない。
4人で遊び続けた結果、未来の方が彼らに追いついてくる。

